五島記念文化賞 美術新人賞 研修帰国記念「見えない時間」


会期: 2021年9月23日(木、祝) – 10月10日(日) 13:00 – 18:00
休館日: 9月26日(日)、9月29日(水)、10月6日(水)
入場料: 無料

※新型コロナウイルス感染拡大の状況により入場制限または、予約制となる場合があります。

旧平櫛田中邸アトリエ
東京都台東区上野桜木2-20-3

主催
公益財団法人東急財団

協力
岡山県井原市、
上野桜木旧平櫛田中邸、
NPO法人たいとう歴史都市研究会、
一般社団法人谷中のおかって、
山喜運送有限会社

後援
ポーランド広報文化センター



五島記念文化賞とは

豊かな生活環境の創造に力を尽くした、故・五島昇東急グループ代表の事績を記念し、芸術文化の分野における優秀な新人を顕彰することを目的に1990年に創設されました。美術とオペラ の分野で次代を担う若手芸術家に「五島記念文化賞」(美術新人賞・オペラ新人賞)を授賞し、 海外研修への助成および研修終了後の成果発表の機会を提供しています。本展は、研修終了後 の成果発表として助成を受けています。


東影 智裕 Tomohiro Higashikage

私の制作の根底には重要な要素として「生と死」が存在します。研修地に選んだポーランドの 古都クラクフは、複雑な歴史背景を持ち、死をテーマにした作品を多く残す、タデウシュ・ カントルを輩出しています。研修以前は東欧に対してどんよりとした薄暗いイメージを抱いていたのですが、ポーランドに降り立つと、力強く差し込むような日差しや都市の賑わい、市場の豊かな色彩などにとても驚き、渡航以前のポーランドのイメージが一新されました。実際に 生活してみると、さまざまな部分で自分の考え方がとても日本的であることに気づきます。またポーランドで自分の作品について、「動物の頭部に人の心や魂のようなものを内包する作品を 目指して制作している」と説明すると、宗教的観点からもとても驚かれることが多く、細かい技巧的な部分や考え方も含め自分の作品がとても日本的な作品であると実感し、改めて自分自身が生まれ育った環境から得た感覚を基にした作品を作りたいと考えるように変化しました。

クラクフの生活のなかでひときわ印象に残ったことが、光の陰影です。差し込むような強い光から穏やかな日の光、中世から残る建物の計算された採光、そのどれもが美しく、今まで気にも 止めていなかった自然の陰影にとても興味を惹かれました。美しい街並みのクラクフから帰国するのがとても名残惜しかったのですが、日本に帰国し、東京から兵庫の山間の田舎へ生活拠点を移し、何気ない里山にかかる雲の流れや時間、季節の流れで変化していく景色、湿度を感じる空気など、クラクフで感じた陰影とは別の美しさに気づきました。その景色から得たものを作品や 展示空間に取り入れたいと考え、この展示では、彫刻の大家 平櫛田中(※) が使用していた旧アトリエを展示会場とし、クラクフでの研修で得た陰影、日本的感覚の再認識を基に鑑賞者と作品が独自の空間を共有し、静かな時間の存在が感じられるような空間を作り出したいと考えています。

※平櫛田中(1872~1979)岡山県井原市出身、近代木彫を発展させた彫刻家